← 作曲教室トップに戻る
このテンプレの考え方
普通の曲はセクションごとにコード進行が変わることで時間が進む。分析した曲は4小節のループ1個がほぼ全編を支配し(サビだけ2コード交互)、
代わりに①どの帯域に何を置くか(帯域の塗り分け)と②どのセクションでどのトラックを鳴らすか(レイヤーの出し入れ)で曲を成立させている。
MVと一緒に流れる前提の音楽では、場面転換は映像が担当するので、音側はこれで足りる——という設計。以下の数値は全てステム解析の実測。
STEP 0:ループを覚える(コードはこれで終わり)
実測キーはB♭マイナー。打ち込みやすいようにAマイナーへ移調した版で作る(構造は同一)。
メインループ(イントロ・Aメロ・2番…ほぼ全部これ)
サビだけ(2コード交互)
💡 実測メモ
i → III → VII のループはマイナーキーの最頻出パターンのひとつ。終盤は全体が2半音上(実測でCm/E♭圏)へ持ち上がる「ラスサビ転調」の挙動も検出された。まずは転調なしで完成させ、余力があれば最後のサビだけリージョンごと+2半音してみる。
STEP 1:帯域の地図(ステム実測値)
各ステムのエネルギーがどの帯域に集中していたかの実測。全員の「住所」が見事に分かれている。
ギター
実測: 400-1k 33% / 2.5-6k 30%(二山)
歌
実測: 400-1k 38% / 150-400 28% / 1-2.5k 22%
ピアノ(パッド役)
実測: 150-400に76%集中
ドラム
実測: 20-150に83%(キック支配)
ベース
実測: 60-150 63% / 20-60 14%。400Hz以上ほぼゼロ
💡 実測が教えること
ベースは400Hz以上をほぼ持たない=倍音を削った「低域専任」。ピアノは76%が150–400Hzに集中=コードを鳴らすというより低中域を面で埋めるパッド。
そしてシンセと歌は同じ400–1kHzに住んでいる——この競合をどう解決しているかがSTEP 2の構成表に表れる。
STEP 2:構成表(実測RMSから復元したレイヤーの出し入れ)
各ステムの音量推移から復元した実際の構成。コードは変わらないのに、この出し入れだけで2分49秒が持つ。
|
イントロ 8小節/歌あり |
間奏 8小節 |
Aメロ 12小節 |
サビ 12小節 |
落ち 8小節 |
2番 12小節 |
サビ2 20小節/+2転調 |
ソロ 8小節 |
| 歌 |
中央1本 | — | 中央1本 | ワイド | 中央1本 | 中央1本 | ワイド | — |
| ギター |
薄 | 薄 | 薄 | ON | 薄 | ON | ON | 前面! |
| シンセ |
ON | ON | ON | 抜く | ON | ON | 抜く | — |
| ピアノ |
ON | ON | ON | ON | ON | ON | ON | 薄 |
| ベース |
後半IN | ON | ON | ON | 完全OFF | ON | ON | ON |
| ドラム |
薄 | フル | フル | フル | 薄 | 中 | フル | フル |
💡 実測で見つかった3つの技
①サビでシンセが抜ける:歌と同じ400–1kHzに住むシンセを、歌が主役の場面で退避させている。帯域の競合をアレンジ(出し入れ)で解決する実例。
②落ちでベースが完全OFF(実測-135dB=無音):低域を根こそぎ抜いてサビ2の落差を最大化。
③アウトロは歌が消えてギターソロ:最後の8小節でギターが約8dB前に出る。歌の帯域が空いた席にギターが座る。
STEP 3:打ち込み表(Am移調版)
| トラック |
置く音 |
リズム |
実測からのメモ |
| ピアノ |
Am: A2+E3+A3+C4 C: C3+G3+C4+E4 G: G2+D3+G3+B3ループのコードを密集で |
全音符。小節頭で押さえて伸ばす |
低中域(150-400Hz)を面で埋める係。高い音域に広げない |
| ベース |
A1 / A1 / C2 / G1ループのルートを追う |
基本は全音符〜2分。サビは8分で刻む |
音色は倍音の少ないシンセベース。EQで400Hz以上をカット(実測でほぼゼロ) |
| シンセ |
A4→B4→C5→E5Amペンタから4音 |
8分ループ。2拍で1周 |
400-1kHzの住人。サビでは必ずミュート(構成表①) |
| ギター |
コードトーンを単音でなければ省略可 |
サビ・2番でバッキング、最後の8小節でソロ |
実測は400-1kと2.5-6kの二山。ソロは高い方の山で弾く |
| メロ(歌) |
A・C・D・E・GAmペンタ/A4〜A5 |
2小節単位で同じ形を繰り返すと様式に合う |
歌でもリードシンセでも可。広げ方はSTEP 5 |
ドラム基本形(実測: Aメロ〜サビ共通の骨格)— 1小節。コピペで増やす
↑ 四つ打ち+2・4拍スネア+8分ハット(実測グリッドと一致)。サビは4拍目のキックを16分で2連にすると実測の「追い打ち」が再現できる
STEP 4:歌の広げ方(実測L/R分析より)
🎤 実測結果
Aメロの歌はL/R相関 0.97=中央1本(同じ素材を中央に重ねても計測上は1本と区別できない)。
サビはL/R相関 0.3〜0.6、周波数コヒーレンス 0.1〜0.3=左右に「別内容」の声が置かれている。単なる同一コピーの左右振りではなく、左右で中身が違う。
🎛 テンプレでの再現手順
Aメロ:メロは1トラック、パン中央。それだけ。
サビ:メロのリージョンを複製して2トラックにし、L100/R100に振る。そのうえで左右を「別物」にする——片方を+10〜20セント持ち上げる、フォルマントを少しずらす、タイミングを崩さず別テイクを録る、のどれでも可。左右が同じままだと中央に戻って広がらない(実測が示す通り)。
作業順
1
プロジェクト設定:BPM 137・4/4
トラック6本:ピアノ/ベース/ドラム/シンセ/ギター(省略可)/メロ。サビ用のメロ複製トラックも1本。
2
ループを4小節作る:Am | Am | C | G
ピアノ(全音符)とベース(ルート)だけでよい。これが曲の地面。
💡 できたら曲の長さぶん全部コピペ。ループは最後まで変わらない
3
ドラム基本形を1小節→コピペ
上のグリッド通り。イントロと落ちは後で音量を下げるか間引く。
4
シンセ8分ループを乗せる
A4→B4→C5→E5。EQで400Hz以下をカットして住所を守る。
5
構成表どおりにリージョンを消す
全部並べてから、STEP 2の表で「—」「抜く」のリージョンを削除。特に:サビのシンセを抜く、落ちのベースを消す。
💡 展開を作る=どこで何を黙らせるか決めること
6
サビだけコードをC | E交互に差し替え
サビ区間のピアノとベースだけ、C→E→C→Eに置き換える。Eの音はE2+B2+E3+G#3(ベースはE1)。
7
メロ→サビでワイド化
Amペンタでメロを作り、サビ区間だけSTEP 4の手順で左右に広げる。
8
仕上げ:帯域の掃除と、余力があれば+2転調
STEP 1の実測帯域に合わせてEQで各トラックの住所の外を削る。最後のサビをリージョンごと+2半音すると実測曲と同じ挙動になる。
チェックリスト
4小節ループ(Am|Am|C|G)以外のコードを使っていない(サビのC|E交互を除く)
元になった曲を聴き直して、同じ場所(サビのシンセ抜き・落ちの無音ベース・アウトロのソロ)を確認した
🎸 この教材を使ったレッスンにご興味があれば、
お問い合わせからご連絡ください。